下若宮(鶴岡八幡宮)

鎌倉市材木座にある由比若宮(元八幡)

源頼朝が初めて鎌倉の地を踏んだのは、治承四年十月七日です。大軍を率いて武蔵国から下って来た頼朝は、化粧坂ないし亀ヶ谷坂を通り亀ヶ谷郷へ到り、河内源氏にゆかりの鶴岡八幡宮を遙拝しました。この八幡宮は源頼義が安倍貞任を成敗した際に、戦勝を祈願して源氏の氏神である石清水八幡宮を勧請して由比郷(現在の材木座)に建立したものです。後に、武勇で知られる源義家も修復を加えました。

鎌倉入りしたわずか五日後に、頼朝は由比郷に在った八幡宮を小林郷の北山に遷宮し、新しい社殿を建て先祖を崇めました。頼義や義家の故事を踏襲することで、河内源氏の正統な後継者だと自他に認めさせたかったのでしょう。翌養和元年七月には、武蔵国浅草から宮大工を招いて鶴岡若宮の本格的な造営に着手し、多くの御家人を集めて盛大に上棟式を執り行いました。これが現在の鶴岡八幡宮です。

由比郷にあった八幡宮は当時は下若宮と呼ばれたようですが、今では由比若宮ないし元八幡と呼ばれ、小町大路が横須賀線と交わる踏切近くに鎮座します。住宅に囲まれた小ぶりな社殿は、由緒を知らなければ気付かずに通り過ぎてしまいそうです。

アクセスはJR鎌倉駅からバスで「元八幡」停留所が便利です。近くに駐車場はありません。

(公開日:2024-03-05)